さつき工業協同組合 様
さつき工業協同組合
情報企画部 担当部長
浅井 秀樹氏
さつき工業協同組合は、日本全国の事業者向けにETCカード・ガソリンカードの貸渡・事務代行事業を展開する事業協同組合。運輸物流業や小売卸売業を中心に大企業から個人事業主まで1,600以上の組合員が加入しており、同種の協同組合では国内屈指の規模を誇る。
さつき工業協同組合では、ETCシステムが本格導入された2001年からおよそ5年間、組合員向けに発行するETCカードの請求書・利用明細書を作成するシステムをMicrosoft Access上に構築していた。ところがETCが普及し、組合員数が増加するにつれ、システムの処理能力が限界に近づいていったという。ETCカードに関する事務手続き全般を担当する情報企画部 担当部長の浅井 秀樹氏は、次のように当時を振り返る。
「Accessのデータベース容量には最大2ギガバイトという制限があり、このまま組合員数が増えていくとシステムの処理能力が限界を迎えるのは時間の問題でした。また、月に一度発行するETCカードの請求書・利用明細書は、2007年当時で月1万枚以上に及び、プリンターをフル稼働しても1日の業務時間内に印刷が終わらないなど、業務負荷も大きな課題でした。そこで将来的なことも考え、Access上に構築していたシステムを全面的に刷新し、新しいシステムを作り直すことにしました」
さつき工業協同組合は2007年、既存システムの構築を担当したシステム開発会社、株式会社マークス(本社:東京都千代田区)に協力を仰ぎ、両社が共同して新しいシステムの開発に着手することになった。情報企画部 部長の西川 潔氏は、次のように語る。
「まずはデータベースにMicrosoft SQL Serverを利用することにし、ETCカードの請求書・利用明細書を集計・発行するシステムはスクラッチで開発することにしました。このときに改めて、請求書・利用明細書を作成する帳票の仕組みをどうするかを検討しました」
さつき工業協同組合
情報企画部 部長
西川 潔氏
西川氏によると、請求書・利用明細書を作成する帳票の仕組みについてはマークスに一任することにしたという。依頼を受けたマークスは、必要なデータをMicrosoft Excelのフォーマットに書き出して帳票を作成する方法、帳票の作成・印刷・PDF出力機能もスクラッチで開発する方法など、さまざまな方法を検討した。しかし、これらの方法は処理スピードが十分ではなく、コストもかかるという理由から断念。市販の帳票ツールをシステムに組み込むことが最善策との結論に至った。
「請求書・利用明細書を作成するには、少なくとも100万件以上の走行データを帳票に読み込んで印刷、またはPDF出力する必要がありました。その帳票作成と印刷、PDF出力の処理スピードを最優先にして複数の帳票ツールを比較検討した結果、最も高速に処理できることが決め手となり、インフォテックの『Create!Form』を採用しました」(西川氏)
新しく導入されたのは、帳票設計開発ツールの「Create!Form Design」、印刷用ランタイムの「Create!Form PrintStage」、PDF帳票出力用ランタイムの「Create!Form Cast」の3製品。システムへの組み込みや帳票の設計は、さつき工業協同組合のリクエストに応じてマークスが行った。
「マークスによると、Create!Formはシステムに組み込みやすく、帳票設計もコーディングしやすいとのことでした。とくに帳票設計でこだわったのは、利用明細を出力する部分です。すべての走行データを一覧表示する必要があるので、文字サイズを大きくすると1枚の用紙に出力できる数が限られてしまい、組合員によっては膨大な数の利用明細書を印刷しなければなりません。Create!Formでは、文字サイズを出来る限り小さくしながら一覧表示のレイアウトが崩れないように工夫することができました」(浅井氏)
「請求書」「利用明細書」の出力サンプル
こうして2007年に運用を開始したシステムは、2020年まで大規模改修が行われることもなく、13年にわたって使われている。現在はETCカードやガソリンカードの請求書・利用明細書など30種類以上の帳票出力にCreate!Formが使われているという。
「システムの導入当初は、PDF出力を希望する組合員は5分の1程度、残りは帳票を紙に印刷して出力していました。今は時代が変わったこともあり、PDF出力が多くなっています。とはいえ毎月約2万枚の請求書・利用明細書を印刷しており、PDF出力は約3万件あります。データベースから走行データを読み込んで帳票を出力するという作業は、基本的に自動処理できるようになっています」(西川氏)
これにより、かつてのシステムに比べて処理スピードは大幅に高速化し、現在は6時間で請求書・利用明細書の出力が終わっているという。
「現在のシステムを運用してから、情報企画部の業務負荷は大幅に軽減されています。紙に印刷する数が少なくなったため、仕分けや封入を担当する人員の削減、郵送コストの削減などの効果も得られています」(浅井氏)
基幹システムと帳票処理機能の構成イメージ
さつき工業協同組合では現在、2021年10月のリリースを目標に現行システムのバージョンアップに取り組んでいる。
「さらなる利便性や処理スピードの向上を目指してバージョンアッププロジェクトを立ち上げ、現在はOSやデータベースを最新版へ移行する作業を進めています。同時にCreate!Formも最新の『V11』へバージョンアップも実施しているところです」(西川氏)
ちなみにCreate!Formのバージョンアップ作業は、コンバートツールを使ってスムーズに行えているとのことだ。
「今後は、例えば組合員向けの事務用品の販売など他システムで出力している帳票を徐々にCreate!Formへ切り替えるなど、適用領域を広げていく予定にしています。また将来的には、我々と同業の組合に対し、請求書・利用明細書を効率的に発行できるシステムとして横展開することも検討していきたいと考えています」(浅井氏)
※取材 2020年11月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。